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「恋する文化人類学者」(鈴木裕之 著 世界思想社)

劇団 東京乾電池の芝居を観るために久しぶりに青春時代を過ごした下北沢を訪れた。時間に余裕があったのでお気に入りの本屋B&Bで一冊の本をタイトル買いした。

「恋する文化人類学者」(鈴木裕之 著  世界思想社)。

著者はアフリカ音楽研究を専門にする文化人類学者。 帯にはこのように書かれていた。

これは恋の物語であり、異文化交流の物語である。
アフリカで著者は彼の地の女性アイドル歌手と恋に落ちた。
結婚式は、8日間にわたる壮麗なものだった。
ラヴ・ロマンス風 文化人類学入門

私は大学時代に文化人類学を専攻した。この学問に魅了された。著者である鈴木氏は、大学時代には専攻していなかったとある。学生時代の貧乏放浪旅行を経て、まともに就職はしたくない、もっと世界中をブラブラしてみたい、と文化人類学の大学院を受験したというのだ。 イントロダクションで書かれてこのメッセージは私が文化人類学に描いた理想そのものだ。

私がこの本を書く動機は、人類の多様性を尊重したいからである。
私はさまざまに異なる人々がいっしょに生きることをすばらしいと思う。
本書を読んだことをきっかけに、多様性を受け入れ、「違い」を楽しんでくれる人が増えてくれればと思う。

また妻となるニャマが属していたグリオについての記述が興味深かった。グリオは主に西アフリカのサバンナ地域に居住する民族に多くみられる。三つに身分制度が分かれており、グリオは真ん中にある職人の中にカテゴライズされる。

「ホロン」自由民(王族、貴族、農民、商人など)
「ニャマカラ」職人(鍛冶、皮加工、ジュリ《語り、歌、楽器》→グリオ)
「ジョン」奴隷

興味深かったのはグリオは歴史の語り部として歌ったり、踊ったりする職人であるばかりでなく、言葉を扱う職人として、喧嘩や離婚騒ぎなどが起きた際には仲介し、言葉の交通整理をし、故事やことわざを用いながら当事者の怒りを静めていく役割を持っていること。  自らの結婚にいたる過程や8日間にもおよぶ結婚式の様子を通過儀礼(分離・過渡・統合)で解説しているところなどは、まさに文化人類学入門書にふさわしい。「親族の基本構造」「西太平洋の遠洋航海者」「贈与論」といった文化人類学の古典の紹介もこうした具体的なケーススタディに付随させると実に理解しやすい。 世界中、そして日本国内でも民族問題やいがみ合いが絶えない。真の意味で人類の多様性を認め合えるような社会を実現させるために人類の英知を無駄にしてはいけないと思う。文化人類学とい学問が目指した理念やグリオのような言葉の職人による紛争を解決する力をどのように養い、発揮するようにすべきかを考えさせてくれた一冊だった。

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2015.5.5

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