クロード・ランズマン監督の「SHOAH ショア」を渋谷のイメージ・フォーラムで観た。ナチスによるユダヤ人の強制収容、ホロコースト(大量虐殺)の全貌を当時の関係者の証言のみで構成されたドキュメンタリー映画だ。ナレーションやBGMも無く、当時の写真や記録映像などの挿入も皆無である。証言を引き出すインタビューと撮影当時の「現場」の様子が淡々と映し続けられていく。英語、フランス語、ドイツ語などの音声が飛び交い、字幕を追いながらイメージが膨らんでいく。その時間なんと9時間27分。タイトルの「SHOAH ショア」とは、ヘブライ語で絶滅、冒涜、破局の意味。
頭脳警察のPANTAがソロになって「クリスタル・ナハト」というアルバムを1987年に出した。「クリスタル・ナハト(水晶の夜)」とは、1938年11月8日、ナチスによるシナゴーグ(ユダヤ教会堂)・ユダヤ人商店街破壊事件が起きた夜のこと。学生時代に聴いて衝撃を受け、いくつかの曲はカバーもした。「シナゴーグ」「ホロコースト」「ディアスポラ」という言葉もこのアルバムで覚えたと記憶している。
書籍「歴史からとびだせ」(JICC出版局 1989)の中でPANTAがこのように言っている。
「クリスタル・ハナト」というタイトルで、この内容なら日本でも出せる。ヨーロッパの話だからね。ところが、日本にとってのクリスタル・ナハトみたいなものを取り上げるとダメなんだよ。つまり南京、重慶、あるいは朝鮮人大虐殺、その辺の問題を、今レコードに出して市場に出すことはできないんだ。だから「クリスタル・ナハト」から、同時代のアジアへとスライドさせたい、引き寄せたいという気持ちもあったんだ。
「SHOAH ショア」もヨーロッパの話、遠い過去の話としてではなく、まさに現代の自分自身の身の回りに起こっていることとして受け止めるべきなんだと感じました。
2015.4.19.